仮設を制する者は、現場を制す!
若いときに教わったことは忘れないものだな。つくづく感じる年になってきた。
数多く貴重な経験を積むことが出来た。
今日はそんな中で、座右の銘にしています(先輩からの)言葉を紹介します。
「仮設を制する者は、現場を制す!」です。
ご承知の通り、仮設は建物が完成しますとなくなってしまいます。
仮設は施工するときに「安全に効率よく」仕事をするための作業者にとっては重要な作業環境になります。
一方仮設材料はリースをしている場合が多いので、日々「リース料金」がかかってきます。
工事の期間が延びますとリース料金が増えるわけです。
ですから、「仮設はいかに早く撤去するか」も大切になってくるわけです。
ある日、現場の仮設足場の計画図を作成していましたところ、先輩から、これは使えんなと一言。
何が足りないのか考えながら、4-5日かけて、再度、計画図を作成しました。
よし!今度は大丈夫これでいけると、自分としては大満足のつもりでした。
作成してニコニコしている私に気が付いて、先輩が近づいてきました。
うーん、これも使えんな。
徹夜して書いた図面でしたが「使えんな」の一言でした、無念。
一体何が足りないのだろうか?
現場の躯体図を見ながら、建物の外観に沿うよう作成して、いい出来と考えていたのですが、わかりませんでした。
数日たって、先輩からヒントをもらうことが出来ました。
ヒントは「この足場、誰が使うんだ?」でした。
誰って、現場の作業者に決まってますが、、、、
「作業者にお前の書いた図面見せてみろ」でした。
早速(現場の近くに、作業者の宿泊施設がありましたので)休日に型枠大工・タイル・左官等々の親方にあって、図面を見てもらうことにしました。
最初に左官の親方のところへ行きました。
結論をいいますと、足場の仮設計画を説明しようとしたところ、図面をみた刹那。
左官の親方から、「あーこれはあかんな」でした。先輩と同じでした。なぜ?
親方から、次の日、別の現場が近くにあるから見に行こうと声をかけてくれました。
その現場の足場を見て、私の施工図と変わらないなと思いました。
よーく、現場の作業者の動きを見るように言われました。
足場でなく?
作業者の方が気持ちよく仕事をしている姿を30分くらい見ていました。
工事は左官工事でした。
工事の内容は、外壁の下塗り材料のモルタルを一輪車で運んでいるところでした。
作業者が一輪車を動かして行き交う姿が目に入ってきました。
『アッ!!』一輪車であの作業者、現場の建物を一周して戻ってきている。
そうか、一周できるんだ。
「つまり、段差や途中で通行止めがないんだ」「わかった!!」足場というものは、作業者にとって、平坦で段差のない仮設足場がいい。
仕事がしやすく、効率がいいし、安全に仕事ができる!!
仕事も早く終わる!!
その親方に話してみると、「わかったかい、そりゃ良かった」。
帰り道、親方からよく気が付いた。
これからは「足場、あんたに任せるよ」。
親方のニッコリした笑顔が忘れられません。
現場事務所に帰って、さっそく足場の図面を作成。
そばにいた先輩。チラッと私の足場図面を見て、一言。
「足場の担当まかせるよ!」でした。
答えは、現場にありました。
作業者の安全、作業者にとって仕事のしやすい環境。
「その原点」がわかった気がしました。
【岡野和明(現場のプロフェッショナル)】
ゼネコン、住宅メーカーの現場監督から責任者を歴任。住宅メーカー時代は代理店(工務店)の経営・実務指導もおこなっていた、経験豊富なスペシャリスト。現在は現場管理、品質、安全指導のプロフェッショナルとして、工務店からゼネコンなど大小問わず現場を指導。